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-武蔵野線 205 系-

電気工学科 2年 6152番 松本 佑輝

1.はじめに

 神奈川県横浜市鶴見区の鶴見駅と千葉県船橋市の西船橋駅を結ぶ武蔵野線。このうち、東京都府中市の府中本町駅から西船橋駅間で旅客運用がされており、一般にこの区間を武蔵野線という。現在武蔵野線では205系と209系の2種類の車両が活躍している。ここでは205系について解説していこうと思う。


2. 205系とは

 205系とは、1985年から1994年までの21年間に合計1461両が製造された車両である。山手線、横浜線、南武線などの首都圏の路線の他に、東海道・山陽緩行線や阪和線など関西地区にも導入された。1979年に電機子チョッパ制御の201系が登場し中央線にデビューしたが、初期投資が課題となり、当時の国鉄に大きな負担がかかったため、主に中央線などへの投入にとどまった。そこで103系に代わる車両として、制御方式を界磁添加励磁制御に改めた、205系が登場した。205系は国鉄通勤形車両では初となった、前述の界磁添加励磁制御のほかに、軽量ステンレス車体、ボルスタレス台車などが採用され、新製当時は注目された。


3. 武蔵野線205系の分類

 武蔵野線の205系は大きく二つに分類される。一つは新規導入されたグループと、もう一つは他の線区から転属してきたグループである。前者はいわゆる「メルヘン顔《として知られている。このうち1編成はVVVF化改造や編成組み換えが行われたが、現在5編成が活躍している。後者は主に山手線などから転属してきたグループである。そのほとんどがVVVF化改造を受けている。


表1 武蔵野線205系VVVF編成
編成 クハ205 モハ205 モハ204 サハ205 サハ205 モハ205 モハ204 クハ204 補足
M1 104 5001 5001 168 169 5002 5002 104
M2 105 5003 5003 170 171 5004 5004 105
M3 44 5005 5005 87 88 5006 5006 44
M4 46 5007 5007 91 92 5008 5008 46
M5 31 5033 5033 206 207 5040 5040 31
M6 47 5011 5011 93 94 5012 5012 47
M7 48 5013 5013 95 96 5014 5014 48
M8 6 5015 5015 210 211 5016 5016 6
M9 49 5017 5017 97 98 5018 5018 49
M10 50 5019 5019 99 100 5020 5020 50
M11 7 5021 5021 212 213 5022 5022 7
M12 43 5023 5023 85 86 5024 5024 43
M13 8 5025 5025 216 217 5026 5026 8
M14 45 5027 5027 89 90 5028 5028 45
M15 29 5029 5029 208 153 5030 5030 29
M16 57 5031 5031 113 114 5032 5032 57
M17 10 5009 5009 224 225 5039 5039 10
M18 58 5035 5035 115 116 5036 5036 58
M19 59 5037 5037 117 118 5038 5038 59
M20 5 5010 5010 226 227 5034 5034 5
M21 60 5041 5041 119 120 5042 5042 60
M22 32 5043 5043 63 64 5044 5044 32
M23 9 5045 5045 230 231 5052 5052 9
M24 33 5047 5047 65 66 5048 5048 33
M25 34 5049 5049 67 68 5050 5050 34
M26 12 5051 5051 150 151 5046 5046 12
M27 51 5053 5053 101 102 5054 5054 51
M28 52 5055 5055 103 104 5056 5056 52
M29 13 5057 5057 154 155 5058 5058 13
M30 53 5059 5059 105 106 5060 5060 53
M31 55 5061 5061 109 110 5062 5062 55
M32 14 5063 5063 156 157 5064 5064 14
M33 56 5065 5065 111 112 5066 5066 56
M34 16 5067 5067 158 159 5068 5068 16
M35 145 5069 5069 31 32 5070 5070 145
M36 103 5071 5071 218 219 5072 5072 103
                   
凡例 総武線 山手線 南武線 武蔵野線 京葉線 埼京線


表2 武蔵野線205系界磁添加励磁制御編成
編成 クハ205 モハ205 モハ204 モハ205 モハ204 モハ205 モハ204 クハ204 補足
M51 101 270 270 271 271 272 272 101
M52 130 355 355 356 356 273 273 130
M61 145 392 392 393 393 394 394 145 M32,M35編成に
M62 146 395 395 396 396 397 397 146
M63 147 398 398 399 399 400 400 147
M64 148 401 401 402 402 403 403 148
M65 149 404 404 405 405 406 406 149
M66 15 43 43 44 44 45 45 15 横浜線へ転属
                   
凡例 南武線 武蔵野線 京葉線


(注意)
1. 下線付きの車番は組成を変更したものである。
2. 太字の車番は補助電源がSIVである
3. 斜体の車番はMG未搭載


3.1.新規導入されたグループ

 最初の5編成は、1991年3月に導入された8両×5本の40両で、豊田電車区(現豊田車両センター)に配置された。武蔵野線は以前より京葉線へ直通運転をしており、京葉線内の急勾配に対応するよう、MT比率を6:2とした。編成内に付随車(以下サハ)はなく、制御付随車(以下クハ)と電動車(以下モハ)からなる。クハの前面形状は京葉線向けのものと同様であるが、FRP部分が京葉線向けでは白であったものが、武蔵野線向けでは銀色になっている。また戸閉装置はこれまでの床置式から鴨居式に変更され、開閉音が静かになった。さらに登場時から現在に至るまで、スカートを装備しないのもこのグループの特徴でもある。



写真1 武蔵野線生え抜きのM64編成


3.2.他線区から転属してきたグループ

 2002年、中央総武緩行線のミツ15編成ならびにミツ16編成のうち、中間のモハユニットを除いてVVVF化されたうえ、武蔵野線に転属してきた。これらが転属組初の編成となった。なお中間のモハユニットは1000番台に改造され、現在南武支線で活躍している。M3編成以降の種車はほとんどが山手線で活躍していた編成から改造され、M’車にMGがなかった編成に関してはSIVが取り付けられるなどして転属してきたが、M15、M32、M35、M36編成ならびにM51、M52、M66編成はそれぞれの誕生の経緯が特徴的である。



写真2 元ヤテ46編成のM4編成

 M15,32,35編成は大きく関わりをもって武蔵野線に転属した。もともと八高・川越線のある103系2編成を、205系モハ2ユニットとサハ4両の合計8両を用いて、3000番台に改造したうえで置き換える予定であったが、りんかい線での70-000形10両化に伴い、70-000形のクハ4両並びにモハ1ユニットが余剰となり、これらをJR東日本が引き取り、モハ1ユニットを新製したうえで209系3100番台として2本用意し、103系を置き換えた。これにより、転用予定であった上記の205系8両は捻出された。
 また、当初武蔵野線へ転属する予定だったヤテ54編成はATCを装備しているという理由で埼京線に転属した。そのため、ヤテ54編成に代わる武蔵野線向けの車両が新たに必要となったが、上記の8両では先頭車化改造する必要があり、武蔵野線には先頭車化改造車は存在せず、1編成だけワンハンドル車が存在することとなり、運転都合上好ましくなかった。そこでこの8両は武蔵野線に転属せず、すでに先頭車化改造車が存在していた南武線に転属した。こうすることによって、南武線のオリジナルの先頭車の編成が余剰になるため、それを武蔵野線に転属させた。この編成がナハ45編成で、ハエ4,16編成のサハを組み込み8連化した。なお、武蔵野線のサハ2両の種車がそれぞれ異なる編成であることは、M15編成以外にないため珍しい。

 M35編成は元々界磁添加励磁制御のM61編成で、モハが上足していたM32編成を正規の編成にするために、VVVF化改造を行い、1ユニットを捻出させてM32編成に組み込んだ。なおM32編成にモハを組み込む際、M61編成のモハ204-393とモハ204-392が差し替えられたが、これはモハ204-393へのMG搭載工事が間に合わなかったことなどから急遽このような措置がとられた。ところで205系のモハユニットは基本的に同じ番号の組み合わせのため、このような措置は極めて異例である。

 M66編成は、2007年3月のダイヤ改正で武蔵野線での増発に備えて京葉線から武蔵野線に転属した元ケヨ23編成である。当時E233系0番台によって置き換えられた201系が京葉線に転属したため、ケヨ23編成の分の穴埋めができた。このケヨ23編成からサハ2両を抜いて6M2TのM66編成として武蔵野線での増発に対応した。

 また同年1月に川越線で踏切事故が発生し、事故で廃車になったモハ1ユニットの置き換えに、ケヨ21編成からモハ1ユニットが捻出され、ケヨ21編成は8連となっていた。
 その後2009年3月のダイヤ改正で横浜線での増発に備えて武蔵野線の205系を転属させることとなった。そこでM66編成を京葉線から武蔵野線に転属させる際に抜いたサハ2両とモハ1ユニットを交換させ、4M4TのH28編成として横浜線に転属させた。なおH28編成は横浜線で唯一6扉車のない編成となった。またそれによって武蔵野線では車両が上足したが、ケヨ21編成をVVVF化して武蔵野線に転属させた。これがM36編成である。



写真3 アンテナが中央にあるM36編成

 その後2016年3月のダイヤ改正で、武蔵野線では新たに2編成が必要となった。そこで南武線のナハ5,6,9編成を用いてM51,52編成が組まれた。転属にあたり、編成の中央になったモハ204-271とモハ204-356のMGが撤去された。またM51,52編成のモハ205は武蔵野線の205系では数少ないシングールアームパンタ車である。



写真4 シングルアームパンタが特徴のM51編成


4. 武蔵野線205系の外観と内装

4.1.外観について

 武蔵野線では101系や103系の車体色が朱色1号であったことから、205系にもそれが採用された。なお側面の腰板帯には中央線などと区別するために茶帯と白帯を加えた、計3色の帯となっている。また同線の209系500番台も同様のカラーリングとなっている。
 帯色が変わった以外に、外装の変化はないが、種車の製造時期などによって車両ごとに無数の変化がある。ここでは一部を取り上げようと思う。


4.1.1.ドア窓と弱冷房車ステッカーの位置

 生え抜き車並びに前所属が埼京線などの車両についてはドア窓が大きく、前所属が山手線などの車両はドア窓が小さい。また一時期豊田電車区に所属していたM1~M8編成に関しては、弱冷房車ステッカーが標準的なドア上に張られているが、転属時から京葉車両センターに所属している編成に関しては、京葉線の車両と同様、ドア横に張られている。



写真5 ドア窓大(元豊田電車区所属編成)




写真6 ドア窓小


4.1.2.方向幕について

 武蔵野線の205系のうち、M28~M36編成は方向幕がLED式であり、その他の編成については幕式である。LED式では路線吊と行先を交互に表示する。



写真7 幕式の方向幕




写真8 LED式の方向幕(行先)




写真9 LED式の方向幕(路線吊)


4.1.3.台車について

 クハやサハはTR235を、モハはDT50を履いており、5000番台に関しては、DT50からDT70に改造されている。



写真10 TR235台車




写真11 DT70台車


4.1.4.屋根前面付近

 生え抜き車は雨樋に水切が設けられ、丸みを帯びている。また従来の車両と形状も異なる。



写真12 生え抜き車の屋根前面付近




写真13 元山手線の屋根前面付近


4.1.5.コンプレッサーと除湿装置について

 モハ204のコンプレッサー横には除湿装置が取り付けられているが、2次車までと3次車以降とでは形状が異なる。



写真14 2次車までは除湿装置がD20A




写真15 3次車以降は除湿装置がD20B


4.2.内装について

 生え抜き車と転属車では前述のように戸閉装置が異なるため、ドア上の雰囲気が異なる。また、腰掛端部には袖仕切りがあるのも5000番台の特徴である。さらに荷物棚は製造時期によって異なり、網棚とパイプ棚がある。
 内装に関しても編成ごとに無数の変化があるが、外観と同様、一部を取り上げようと思う。




写真16 生え抜き車のドア付近




写真17 転属車のドア付近




写真18 腰掛端部の袖仕切り




写真19 2次車の荷物棚




写真20 4次車の荷物棚


5. まとめ

 2015年にE235系が登場し、現在山手線の世代交代が活発化してきている。置き換えられたE231系500番台が中央総武緩行線に転属し、それによって置き換えられるE231系や209系500番台が、今後どう武蔵野線に絡むかが気になる今日この頃である。今のところM66編成が転出した以外に205系が武蔵野線から去ったという話はないが、製造から30年が過ぎた車両もおり、そろそろ世代交代の波が押し寄せてくるかもしれない。去りゆく205系を見守りつつ、今後も記録を続けていきたいと思う。


参考文献
  • 鉄道ピクトリアル 2002年8月号:「【特集】JR武蔵野・京葉線《、2010年2月号:「【特集】205系電車《、2016年9月号:「【特集】JR205系電車《 株式会社電気車研究会
  • j train vol.63 イカロス出版
  • キャンブックス:「205系物語《 JTBパブリッシング
  • 道車輌ガイドvol.2:「205系《 株式会社ネコ・パブリッシング
  • 国鉄201・203・205・207系電車の軌跡 ~電機子チョッパと新・三種の神器を開発した匠たち~ イカロス出版



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