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〜東洋初の地下鉄から開業90年を迎えて〜
短大 ものづくり・サイエンス総合学科 2年 6053番 林 翔一郎 |
1. 執筆動機 私は普段学校へ通学するときに銀座線を利用している。銀座線を利用する上で現在、過去のこと、また将来の計画について知るようになった。銀座線は日本で最初に(東洋初でもある)開業した地下鉄路線である。また最近では01系が引退し、特別仕様の1000系がデビューしたことも記憶に新しい。そこで今回は銀座線を過去・現在・未来に着目し、その中で現行の車両についても取り上げる。 2. 銀座線の過去 2.1 銀座線開業の歴史 銀座線開業の歴史については以下の表の通りである。
銀座線は東京地下鉄道(現・東京メトロ)によって1927年(昭和2年)12月30日に浅草〜上野間で開業した。その後、延伸を繰り返して1934年(昭和9年)6月21日に新橋まで開業した。一方で、青山六丁目(現・表参道)〜虎ノ門間は別会社である東京高速鉄道が建設し、1938年(昭和13年)11月18日に開業した。さらに2か月後の1939年(昭和14年)1月15日には、残る区間が延伸され、渋谷〜新橋間がつながった。1939年(昭和14年)9月16日に東京地下鉄道と東京高速鉄道による相互直通運転が行われるようになり、現在の渋谷〜浅草間で直通運転をするようになった。1941年(昭和16年)9月1日には東京地下鉄道と東京高速鉄道のふたつの事業者を統合させる帝都高速度交通営団法が施行され、営団地下鉄の路線となった。1953年(昭和28年)12月1日に丸の内線の開業に備えて「銀座線」という路線名が設定された。1997年(平成9年)9月に虎ノ門〜赤坂見附間に南北線との乗り換え可能な新駅として溜池山王駅が開業した。2004年(平成16年)3月の営団地下鉄解散後は東京地下鉄(東京メトロ)へ民営化を行った。これにより東京地下鉄の路線となった。 今の銀座線は何度か延伸を繰り返した上で開業している。浅草〜渋谷まで開業するのに、初めて浅草〜上野間で開業してから11年ほど経っている。また、複数の事業者によってできていることが分かる。浅草〜新橋間が東京地下鉄道で開業したのに対し、新橋〜渋谷間は東京高速鉄道によって開業されている。 2.2 最新技術が多かった銀座線 2.2.1 銀座線開業当時最新鋭であった1000形 日本初の地下鉄である銀座線開業時(1927年)には当時最新鋭である1000形が導入された。この1000形には地上を走行する車両以上に安全や快適性のためのさまざまな配慮が施された。当時地上を走行する車両は木造や半鋼製車体のものが多かったが、1000形は全鋼製車体となっている。車内では騒音対策が施された難燃性の床が採用され、間接照明が採用された。また、吊り手にはリコ式が採用された。リコ式吊り手は根本に組み込まれたばねにより、使用しないときは窓側に向かって跳ね上がるようになっている。これによって走行中に吊り手が揺れないようになっている。さらに当時においては最新鋭である自動扉が採用された。 2.2.2 日本初の打子式ATS 銀座線では日本で初めて打子式ATSを採用した。今では列車の安全運転には欠かせないATC(自動列車制御装置)があるが、その元祖とも言える装置がATS(自動列車停止装置)であり、開業当時の銀座線に設置された。打子式ATSは運転士が停止信号を見落として列車を進行させると、軌道の外側に設置されたレバーが電車側の突起に触れ、台車に設置されている空気制動装置が動作して自動的にブレーキがかかるという仕組みである。銀座線では1990年代まで打子式が使用され、全車両が01系に統一された際にATCに切り替わった。 2.2.3 当時の技術の現在における評価 1001号車は「1927年、東洋初の地下鉄とし上野〜浅草間2.2km を走行した車両」であり、「その後約40 年間、一貫して営団地下鉄(現:東京メトロ)殿で活躍」したことと、「全鋼製、自動扉、自動列車停止装置の採用などの防災・安全対策や、内装、照明、吊り手等の乗客向けの設備に地下鉄ゆえの特徴」を有し、「後の地下鉄車両の規範となった車両であり、鉄道史、交通史上に重要」であった理由により、2017年3月10日に国の重要文化財に鉄道車両として初めて採用された。 1000形(1001号車)は地下鉄博物館に展示されているが、現在は重要文化財指定により車内に入ることができなくなっている。また、打子式ATSについても展示されている。 写真1 地下鉄博物館に展示されている1001号車 写真2 1001号車の車内(立ち入り禁止になる前に撮影した) 3. 銀座線の現在 浅草から渋谷まで開業した今の銀座線は全19駅、14.3kmを片道30分程度で結んでいる。ここでは銀座線の路線データや現在の車両、そして東京メトロ唯一の踏切について触れる。 3.1 路線データ 現在の銀座線の路線データを以下に示す。
※電圧は750Vに昇圧する計画がある
3.2 現行車両 ・1000系 2012年4月にデビューし、2017年3月に01系が引退してから銀座線の現行車両はこの形式のみとなっている。1000系は旧1000形をモデルにしてデザインされており、レトロ指向でありながらも、操舵台車を採用してカーブにおける騒音を軽減して乗り心地を改善したり、モーターはPMSM(永久磁石同期モーター)を採用したり、また車内ではドア上に液晶ディスプレイを設置したりLED照明を採用するなどして現在の最新技術を多く取り込んだ車両となっている。また、1139F(89F)と1140F(90F)の2編成は内外装とも旧1000形をイメージした特別仕様の1000系となっている。(特別仕様の1000系については特集記事でも取り上げられているので詳細などはその記事を参照されたい。) 写真3 1000系(通常仕様) 写真4 1000系(特別仕様) 写真5 2画面使って次駅表示などを行う編成もある 1134F(84F)以降の新造車両から2画面を利用した案内表示を行っており、この他にあとひとつ広告用ディスプレイがあるのでドア上にディスプレイが3つあることになる。なお現在は所要時間が表示されなくなっている。また既存車両にも順次3画面化が進んでいる。 ・01系 01系は2017年3月に引退したので厳密には「現行車両」でないのだが、つい最近まで走っていたことでもあるのでここで取り扱う。 01系は銀座線のイメージアップを図るために近代化された新型車両として1983年5月に投入された。車体はアルミ車体であり従来の車両とは異なる方法で製造されており、溶接箇所が少ない工法が取り入れられている。また、営団初の旅客サービスのひとつとしてドア上に「車内駅名表示装置」が設置された。列車の進行方向と次に停車する駅名を発光ダイオードで表示し、列車の進行に合わせて自動的に表示が進んでいくシステムである。シンプルであるが、当時は画期的なシステムであった。 写真6 01系外観 写真7 01系外観(くまモンラッピング) 2017年1月頃、01系引退が近い中でくまモンを車両全体にまとったラッピング列車が運行された。 写真8 01系の車内駅名表示装置 01系は銀座線から完全に引退してしまったが、01系の一部車両は熊本電鉄に譲渡されており、今でも熊本電鉄で01系に乗ることができる。熊本電鉄内では2両編成でパンタグラフが後付けされた姿となっており、ワンマン運転なので前面に後方確認用ミラーがついていたり、運賃表モニターがあったり、ドア付近に運賃箱があるといったことで東京メトロ内とは一風変わった雰囲気となっている。 写真9 熊本電鉄の01系(01-135F) 3.3 東京メトロ唯一の踏切 銀座線では東京メトロ内でただひとつの踏切がある(東武、西武、東急線などで東京メトロの車両が踏切を通過することはあるが、東京メトロ内ではここだけ)。踏切は上野検車区の手前にあり、JR上野駅入谷口から徒歩5〜10分程度のところにある。ただし、営業線ではないので乗車中に通ることはなく、回送列車などの非営業列車のみが通過する踏切である。従って乗客を乗せて銀座線の踏切を通過する機会は無いということである(最近では01系のラストランのイベント時に乗客を乗せて通過することがあった)。また、当然ながら上野検車区から入庫・出庫するときにしか通る機会がないので時間帯によってはいくら待っても列車が通過するところを見ることができない。しかし逆を言えば上野始発(止まり)の列車の時刻を調べればある程度の通過時刻を予想することができる。また、この他に試運転や不定期回送で踏切を通過することもある。ただし、上野検車区には地下にも留置線があるので踏切を通過しない列車がある。 写真10 銀座線踏切 銀座線は第三軌条方式なので線路の横に高電圧のサードレールが通っている。そのため線路内に人や車が入ると非常に危険なので、踏切の線路側には可動式の柵が設けられている。列車が通過するときだけ柵が上がって通ることになる。 写真11 踏切の線路側には柵がある 踏切を列車が通過する様子は以下の通りである。また、銀座線の踏切の地図も示した。 写真12 踏切を通過する列車(1139F) 写真13 銀座線踏切 いつもは地下でしか、また地上だと渋谷駅付近でしか見ることができない銀座線が踏切を通り、そして下から間近で見る光景は新鮮であり、なかなか面白いものである。上野に寄る機会があり、時間が合えば是非直接見ていただきたいところである。 4. 銀座線の未来 銀座線では現在多くの駅でリニューアル工事を行っている。リニューアル工事は2017年度中に下町エリア(浅草・田原町・稲荷町・上野・上野広小路・末広町・神田駅)の改装が完成する。また、現在ホームドアの設置工事が進んでおり、一部駅では稼働が始まっている。銀座線では2018年度上半期までに渋谷駅と新橋駅渋谷方面ホームを除いて全駅にホームドアを設置する予定である。また、渋谷駅を移設する工事も行われている。現行の渋谷駅を130m東(表参道)側に移設し、明治通り上部に移設する。移設工事に伴って2016年11月に線路切り替え工事が行われ、工事日には渋谷〜表参道、青山一丁目〜溜池山王間で終日運休となる大規模工事となった。 写真14 ホームドアの設置が進んでいる(上野駅浅草方面ホーム) 5. さいごに 銀座線の開業の歴史について初めはふたつの会社で分かれていた路線であったことは意外と知られていないのではないかと思った。また旧1000形や打子式ATSのことから銀座線は当時の年代としては画期的な技術が多く採用されていることが分かった。そして開業90年を迎えながら今もなお進化していく銀座線は今の東京において重要な路線であるということが感じられた。ちなみにこの記事は2017年8月に書いている。今では多くの駅でリニューアル工事が行われていてホームがとても狭くなっていたり(末広町駅は特に狭い!)、ホームドアが付き始めたり工事の騒音があったり…と少し不便であると感じたことがあった。それでもホームや駅構内にある掲示やHPでリニューアル後のイメージ画像を見て「この駅はここまで変わるのか!」と思い、実際にはどう変わるのか、そして普段使う駅では変わっていく過程を目で見て楽しむようにしている。最後になって言うのも難ではあるが、東京メトロが公式に銀座線のリニューアル情報サイト(http://www.tokyometro.jp/ginza/)を開設している。ここにはリニューアルに関する情報だけでなくホームドア設置の様子をタイムラプスで収めた動画や幻のホームなどといった銀座線に関する面白い情報も提供している。恐らくこの記事をここまで読んでくれている方のほとんどがこのサイトのことを知っているかもしれない。(ここの記事構成を見ただけでこのサイトのことを思い出した方もいるはず?)リニューアル情報サイトは随時更新されているのでたまにチェックすると面白い情報を新たに入手できるかもしれない。記事全体を通して長くなってしまったがこれもまた銀座線にはそれだけ多くの出来事が詰まっているのではないかと思う。そしてこれからの銀座線に期待したい。 参考文献
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