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東葉高速2000系について

電子工学科 2年 6121番 若林 祐太

1. 初めに

 昨年私は、VVVFインバーターの仕組みや構成を述べた。そしてあれからいろいろと勉強をし、VVVFインバーターの出力波形を音声ファイルとして保存する方法に成功した。これはインターネットでVVVFインバーターの研究をしていらっしゃる、偉大な方々に感化され始めた。初めはExcelで正弦波とフーリエ変換によって作り出した三角波をIF関数の論理式で比較し1と-1に区別しグラフ化していた。その後、C言語でWAVファイル(音声ファイルの最も簡単な構造のファイル、音の高さが書き込まれている)を書き出すことができることを知りVisual StudioでCを使いWAVファイルを作ることができた。そしてExcelと同様に三角波と正弦波を比較しWAVファイルに1,0,-1を書き込みVVVFの音を作ることに成功した。しかし、最近まで三角波と思っていたフーリエ変換が実際はのこぎり波であったり、正弦波との比較式が誤っており実際のインバーターであったらモーターが振動、発熱して大問題と、とんでもないことをしていた。そんなこともあるが最近は、新しいVVVFインバーターに多い非同期モード時に周波数を変化させる方法の再現に成功したことや、宇都宮線を走る未更新にE231の墜落インバーターの音を再現するなど、自分的にはよくやっているのではないかと思っている。


2. 解説

 1で少し飛ばしすぎたのでここで少し解説をしたいと思う。


(1)VVVFインバーター

 日本語にすると可変電圧可変周波数制御。電車の動力源、モーターに三相交流を送る装置、電車の特徴の一つとなることが多い。内部的には三角波と正弦波を比較し正弦波が三角波より大きかったら1(HIGH)、小さかったら-1 (2レベルの場合、3レベルは勉強中)と出力する。図1に例を示す。



図1 出力波形の例

 これはモーターの回転周波数が20Hz出力する電圧が50%、9パルスモードの時の波形である。9パルスモードとは三角波の周波数がモーターの回転周波数の9倍ということである。電車でいうとある程度加速が終わるとこのモードに入ることが多い。


(2)フーリエ変換

 世の中に存在する波形はすべて正弦波の和で表すことができるというもの。三角波のフーリエ変換の式は、


 三角波のフーリエ変換の式の導出は理解ができなかったので省略する。


(3)WAVファイル

 音声ファイルの一つ、一定のサンプリング周波数で音を区切りその時の音の大きさを順番に記述していく形式。書き込む際はサンプリング周波数の周期分ずつ計算していきバイナリファイルに書き込み、ヘッダを付ければ完成である。


(4)インバーターの音を録音する装置




写真1 インバーターの音を録音する装置

 電車に乗っているとインバーターの音が聞こえることはよくある。あれは電車のモーターからでている。この聞こえる音はモーターに出力されている信号周波数の2倍の音が聞こえている。なぜ2倍の音が聞こえるかは、自分もよく理解ができていないがモーターにまかれているコイルの鉄心が振動し音が出ている、つまり鉄心がコイルの磁場の変化によってたわみ音が出ている、すると鉄心は端と端の二対があるので聞こえる周波数が2倍になるのではないかと考えた。
 そこでこの機械を使うとインバーターの出力する波形がほぼそのまま録音することができ、インバーターがどんな仕事をしているかとても分かりやすい。
 しかし、後述する通り最近の電車では電磁波が遮蔽されていて録音することができない。意気揚々と電車に乗り込みいざ帰宅して再生するとなにも聞こえないという悲しい結末に何度もなったことがある。改善案として考えているのはコイルをもう一つ直列につなげることである。


3. そして

 作ったファイルは普通の音声ファイルとして再生することができ、いつでも電車のインバーターの音が聞くことができる。(BGMに持って来いである)
 しかしこの音声は、実際の電車から聞こえてくる音とは非常に異なり初めて聞く人は不快感を抱く可能性が高い。なぜならば、インバーターの出力音は国民保護サイレンととても似ているのである。国民保護サイレンはおそらく矩形波を100Hzあたりからスイープさせているのだと思われる。図1を見るとインバーターの出力波形は角ばった矩形波であることと速度とともに周波数も上昇するので、似てしまっていると考えた。
 では、このインバーターの出力音というのはいつ聞くことができるかというとAMラジオを電車内で使うと聞こえたり、専用の機械を使うと聞くことができる。私は写真1のようなものを自作し電車のインバーターの音を聞いている。これは500mHのインダクタと秋月電商のマイクアンプのキットを組み合わせたものである(500mHのインダクタは千石電商にあります)。
 ところが、最近の車両は電磁波が遮蔽されていてなかなか聞くことができない。そして今回の題材である東葉高速2000系の同様で、この装置を使ってもインバーターの音を聞くことができない。そのためどのような制御をしているかが走行音から判断しないとならないため、解析作業が難航している(新京成電鉄8800系の更新車も同じく)。
 作成した音声ファイルを添付する。音量に注意していただきたい。イメージしたのはE233シリーズ。

音声を聞くにはプラグインが必要です。


4. 本題

 ここから、東葉高速2000系(以下2000系)の話をしていきたいと思う。まず2000系は車輪径が860mmで最高速度が100km/hである。なので最高速度では車輪が

100[km/h] ≒ 27.8[m/s]

 より車輪は最高速度では10.28[Hz]で回転していることが分かる。さて、次に2000系はギア比が87:14である。言い直すと、車輪はモーターの回転数の6.21分の1、モーターは車輪の6.21倍で回転している。また歯車は車輪の回転周波数の87倍の周波数でかみ合っている。つまり、最高速度ではモーターは約65Hz、歯車は894Hzでかみ合っている。この歯車のかみ合いによって発生する音はほぼ正弦波と同じように聞こえる。この音は高速域では車輪の回転周波数の87倍の周波数が聞こえるが(この二倍の周波数の音も聞こえる)、低速域などでは聞こえ方も異なってくる。2000系に乗っていると、発振直後に一瞬高い音が聞こえた後におもなギア音が聞こえてくる。発進して約10秒後にブーンという大きな音が聞こえるがこれがなんの音なのかは現在調査中である。



図2 東葉高速2000系


5. 終わりに

 もともとは、自作の録音機が成功し東葉高速2000系のVVVFインバーターの音の解析をして走行音を再現したかったが、失敗と自身の都合により今年の夏では実現することができなかった。しかし、あきらめたわけではない。インターネットの偉大な先駆者の方々に追いつくためにこれからも精進を続け、いつかはあの、三相誘導電動機を自作のVVVFインバーターで回すという夢に向かっていきたい。


6参考文献
  1. インバータ電車の制御システム
    http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1986/08/1986_08_05.pdf
  2. 500mHのチョークコイル
    https://www.sengoku.co.jp/mod/sgk_cart/detail.php?code=EEHD-0A8J
    マイクアンプキット
    http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-04102/
  3. 今回作成したYouTubeアカウント
    これから動画をアップロードする可能性があります
    https://www.youtube.com/channel/UC5HZa7KV0WyvSkNmWVgp6FQ
  4. この他にも多くのインターネットのページなどの知識を活用させていただきました.わかりやすい説明や、素晴らしい技術をありがとうございました.


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