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〜 東上本線の東武50000系列について 〜

交通システム工学科3年 5008番 石毛 大靖

1. 初めに

 今回の読みきりでは、東武東上本線所属の50000系列について取りまとめていく。そのため、伊勢崎線を中心に活躍する50050系については、製造時期や共通化が図られたときに触れる程度になることをご容赦いただきたい。また、系列の表記に関しては、東武公式の呼称ルールで記述する。


2. 50000系列の共通事項

 1両20m級4ドアの10両固定編成である。全てが日立製作所製で、A-trainを採用しており、東武初のアルミ無塗装車である(東武初のアルミ車両は100系)。直流1500V対応で、起動加速度3.3km/h/s,常用最大減速度3.5km/h/s,非常減速度4.5km/h/s。設計最高速度は120km/h。営業最高速度は、東上本線105km/h,有楽町・副都心線80km/h,東急東横線110km/hである。


3. 50000型

 東上本線の地上線向けに製造された。導入目的は、宇都宮線等に残っていた5070系等の吊り掛け電車の置き換えである。ただし、2007年度をもって宇都宮線の吊り掛け電車は全て引退したため、2007年度以降は、8000系の置き換えが主目的となった。

3.1 1次車(51001編成)

 平成16年度に新造された、東武50000系列記念すべき初めの1本目。試作的な部分が多く、前面に非常用扉がなく非貫通となっている。そのため、後に製造される50000系列の車両とライトの位置も異なる。東上本線では、ワンハンドル式が初めて採用されたこともあり、運転士の習熟運転期間が約4ヶ月間設けられたため、実際に営業運転を開始したのは2005年3月からである。製造当初は、側面窓は大型の1枚固定窓であったが、後年50070型2次車で導入されたユニット窓に一部交換された。また、前照灯もHIDからLEDに変更された。



写真1 製造当初の51001編成




写真2 改造が加えられた51001編成


3.2 2次車(51002編成)

 1次車を見直し、今後の50000系列標準となった平成17年度導入編成。半蔵門線直通向け50050型も同時に6編成製造されている。50050型が地下鉄直通を行うため,前面に非常用扉を設けたことから、50000型についても変更された。側面窓は1次車同様大型の1枚固定窓が採用されていたが、こちらも50070型2次車で導入されたユニット窓に変更された。



写真3 製造当初の51002編成


3.3 3次車,4次車(51003〜51004編成,51005〜51009編成)

 時期を少しあけ、平成21,22年度増備されたグループ。2次車までは側面窓は大型の1枚固定窓であったが、50090型に合わせた2枚の開閉可能なユニットサッシ窓となった。その他、モケットの変更やドア下の黄色のマーキングなど変更が行われた。1,2次車での試作的な導入ではなく、本格的な導入となった。



写真4 51003編成




写真5 51007編成


4. 50070型

 東京地下鉄有楽町線・副都心線,東急電鉄東横線・横浜高速鉄道みなとみらい21線の直通運転に対応したグループ。東京地下鉄半蔵門線・東急電鉄田園都市線直通を行っている50050型を踏襲した形だが、車体幅が50000型とそろえられている他、小竹向原に先行して設置されたホームドアにあわせ、先頭車両のみ車体長が125mm長い。また、側面行き先表示機は3色LEDではなく、フルカラーLEDのものになった。

4.1 1次車(前期車 51071〜51074編成)

 平成20年度に東京地下鉄副都心線の開業に伴い、9000系,9050系だけでは車両本数が不足するため、それを補充するために、平成17,18年度製造されたグループ。側面窓は、50000型の1,2次車と同様の大型の1枚固定窓となったが、後に51075編成で導入されたユニット窓に一部交換されている。



写真6 製造当初の51071編成




写真7 改造が加えられた51071編成


4.2 2次車(中期増備車 51075編成)

 東京地下鉄副都心線開業によって、ホームドアの運用が本格化した。これに伴い、9101編成が地下鉄直通運用から離脱、これを補填するため、平成20年度に追加増備されたグループ。50000系列の側面窓は大型1枚の固定窓であったが、空調の非常用換気装備など保守面で難点があったため、試験的にJR209系に類似したユニット窓を導入した。



写真8 51075編成


4.3 3次車後期増備車(51076〜51077編成)

 平成25年度に予定されていた東急電鉄東横線・横浜高速鉄道みなとみらい21線の相互直通運転に先駆けて、平成23年度に追加増備されたグループ。同時期に製造された50090型の側面窓を揃え、50070型2次車で導入されたユニット窓ではなく、2分割のユニットサッシのものとなった。車内案内装置が3色LEDものではなく、LCDモニターとなった。




写真9 51076編成


5. 50090型

 平成20年度のダイヤ改正より、TJライナーが新設、これに順当される専用車両として製造された。平成19年度に4編成、平成22年度にTJライナー増発分の追加で2編成製造された。製造は2ロットとなったが、仕様はそろえられた。
 他の50000系列との大きな相違点として、通常の塗装に青の帯が加えられた。また、シートがクロスシートとロングシートで使い分けの出来るマルチシートとなっている。TJライナーとTJライナー送り込みの夕方上り快速急行及び快速では、クロスシートでの運用、その他ではロングシートとして運転される。車内の案内表示機は、他形式同様の3色LED式がドア上に千鳥配置となっているが、ライナー運用時の考慮として、車両の前後の貫通路上にも設置された。
 平成28年度より、東上本線全線開通90周年を記念して、51092編成と8198編成がフライング東上号のラッピング(塗装)が施され、現在も活躍している。




写真10  51091編成




写真11 ラッピングされた51092編成


6. おわりに

 伊勢崎本線では、日比谷線の20m車両化に伴った20000系列の引退、快速・区間快速廃止などの大きな動きがあり、現在も目が放せない状態だ。西武線でも、Sトレインといった地下鉄直通関連が強化されるなど、大きな動きを見せた。
 そんな中、東上本線ではダイヤ改正は見送られ、ダイヤや車両の動きで特筆すべき変化はなかった。しいて言うのであれば、地下鉄運用から一時期外されていた9102編成が地下鉄直通に復帰したことや、9101編成が無事に全般検査に入場したこと、ふじみ野駅が1週間限定でももいろクローバーZ駅になっていたことなどであろうか。いずれにせよ、来年度も大きな動向はなさそうである。大きなプロジェクトが動き出す前に、現在の記録に徹したいところである。


参考文献
  1. 車両編成表2010 ジェー・アール・アール編 交通新聞社 2017年8月参照
  2. 車両編成表2015 ジェー・アール・アール編 交通新聞社 2017年8月参照


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